■その後の改良点
効率良く水まわしと練りの作業が出来る形状を追求し、試作品を何度も製作した。何度改良することで、実用性に優れ、漆塗りによる耐久性のあるこね鉢は、よりいっそう蕎麦打ちが楽しめる本物のこね鉢に仕上がった。
蕎麦打ちの最初の工程 粉が飛びでにくい水回し
■使っていただくことではじめて蕎麦道具とえいる。
どれだけ苦労して制作しても、使ってもらわなければ、ただの美術品である。飾って眺めているだけでは道具ではない。老舗の蕎麦店でもご使用いただいている本漆塗りのこね鉢は、100%の蕎麦粉を、熱湯を使用し、水回しと練りの作業をほぼ毎日行っているが、この20年一度も塗り直しはしていない。漆文化の起源は、縄文時代またはそれ以上という説もある。漆は安心して使用できる天然塗料であり、漆の抗菌性の高さから、昔から食器などに施されてきた、日本の特有の文化。和食職人は、料理はもちろん道具へのこだわりは大変強い。そのこだわりに十分答えられる、作り手にとっても納得できる仕上がりとなった。
■漆塗りのこね鉢。 長く使用することで、
粉が外に飛びでにくく、中央に粉が集まりやすい形状の安定感のある直径φ60cmのこね鉢は、 一度に2kgの蕎麦を余裕をもって水回しができる。本漆仕上は、熱湯に強く、長年使用して、 たとえ使用感がでてきたとしても、塗り加工により、再び再生できる。 表面の漆の美しさと、木の質感が伝わる優しい仕上がりは、長い年月使用することで、 さらに温かみある独特の風合いへと変化していく。使い手にとっては、長年寄り添う まさに「相棒」であってほしい。 こね鉢の塗り色は、実は意図的に出した色でない場合が多い。その時の季節により、気温・湿度が違う。塗の回数やタイミングにもよるため、化学塗料とは、違う自然の塗料の難しさがある。それはある意味、こね鉢一つ一つ完成させていく中で、どれ一つとして同じものがない。大量生産できないたった一つのこね鉢。手作り感溢れる仕上がりを見ていただきたい。
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